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監督Photo通信 #11

映画撮影開始前、仲卸さんの全店舗にアンケート用紙を配布した。いろいろな設問があったのだが、その1つに「築地で記録して欲しいことはなんですか?」といったものがあった。〝深夜の波除神社にて市場の人々が出勤している様子〟回答の1つに、そんな言葉があったと記憶している。
波除神社は、築地場内の海幸橋門の手前に位置する。その名前の由来は江戸時代に築地周辺を埋め立てたころまで遡る。神社の中には、魚への慰霊を表す様々な塚も建立されており、市場の人々の心の拠り所となっているのが見てとれる。
まだ街が寝静まっている深夜、トラックとターレーが行き交う神社の前では出勤する方々が立ち止まり、そっと一礼し手を合わせるのだ。おそらく何十年も繰り返されてきたであろう、そんな一連の動作には〝今日1日の商売繁盛〟〝安全〟への祈願と〝感謝〟の想いが込められている。映画の中にもあるその姿は厳かであり静謐なものだ。そろそろ今年も、あの大銀杏は見事な黄金に色づくのだろう。

– あとがき として –
これまで全11回に渡って書いてきたPhoto通信も今回が最後となりました。
ここでは、深夜から朝にかけての築地、市場を支える人々、セリ場での正量取引、買い出し人の方々、根底にある家業、地方から見た築地や変化する季節感などに触れてきました。情報の詳細を軸として構成されてはいない映画では、まだまだ前提として消化された要素は多いけれど、すでに映画を観た方には映画をより掘り下げるものとして、これからご覧になる方にはワンダーランドへの入り口になれば嬉しく思っています。
映画について〝なぜ一部のモノローグを英語にしたのか?〟と聞かれることがあります。海外を強く意識したんですね、とも言われるのですが、必ずしもそうではありません。もちろん、国境を越えるメディアとして映画の持つ意義は大きいのですが、一番観て欲しいのはやはり日本の方々なのです。生活の変化で脅かされる専門性と職人性、これは食に限ったことではないでしょう。日本は島国ゆえに、その中だけにいるとアイデンティティを見失いがちになることがあります。しかし一歩外に出れば、様々な日本と向き合うことになるのです。映画の随所には、国外から見つめるような視点でこの日本を俯瞰してみたいという想いがあります。知っているようで知らない築地を通して、日本の文化を再確認すること。現代での豊かさの意味と10年,20年後の未来を見つめたいという願いが根底にありました。国際映画祭を通して、自国の文化について語る言葉の重要性を再認識すると共に、単なる回顧ではなく、国際化が次の段階に進むためには必要なことなのだとも教えられます。
食の欧米化も第3,4世代を迎えています。1つの転換期として、どのようなバトンを次の世代に託すのか?これは私たちの物語です。いつの時代も市場を形作るのは我々消費者のニーズなのですから。 (監督 / 遠藤)

Before we started shooting, we sent around a survey to Nakaoroshi shops. Among all the different questions we had one that asked‘What part of Tsukiji do you like to be documented?’ One person replied “Tsukiji workers passing by Namiyoke Shrine before going to work in the midnight’.
Namiyoke Shrine is located right before Kaiko Bridge that leads to the entrance of the market. History of the shrine dates back to Edo period when Tsukiji had become a landfill. At the shrine, you find cenotaphs of different types of fish, you can feel that this shrine has been a big part of Tsukiji and its people.
Deep in the night, in front of the Namiyoke Shrine where turrets and tracks are busily passing by, you find many Tsukiji commuters pause for a moment, give a quick bow and put their hands together to pray for success, safety for and to thank for the blessing for the day. This everyday ritual, which must have been repeated over decades, touched me as such a peaceful and sacred moment. View of Namiyoke Shrine under the beautiful golden autum Ginko trees that I used in the film, always reminds me of this story.